映画『日々。』の紹介サイトです。
This is an introduction site for the movie "Day After Day.".
企画・制作ノート 今野雅夫(企画 脚本 監督 編集)
この企画は、本作のプロデューサーで、劇中のワークショップ(以後WS)で五十嵐講師役も演じる谷中栄介さんから、3年前に声をかけられたことから始まりました。
谷中さんとは、それまでに短編映画を2本撮っていました。
当時、都内の芸能事務所で実際に、若手俳優志望者向けのWS講師を始めた谷中さんに、ビデオ係として雇われ、彼らと何か撮れないかと言われ、考え始めました。
遊びたい盛りの20代の若者たちが、毎週日曜の午後、都内マンションの一室に集い行われるWSに、月イチほどのペースで僕は参加しながら「彼等の頑張りが報われ、このうちの誰かが売れることなんてあるんだろうか?」と不謹慎ながら思っていました。自主映画監督として、彼ら以上に燻っている自分のことはさておき。
年齢にして20〜30年、倍も離れた、そんな彼等と何を撮るか?
これまで何本か短編映画を撮ってきて、出演者さんやスタッフ達とは、何度かのリハーサルと数日の本番撮影、上映会で再会できるかどうかというのが通常。今回は折角のWS映画なので、ならではのものを作りたいと思いました。コロナ禍もあり、思うようにはいきませんでしたが、ちょっと暑苦しい劇団のようなものへの憧れもありました。
話の発想の切っ掛けは、何度目かのWS中に、本作主演の窪田くんが「今日、帰りちょっと、お時間ありますか?」と当時の事務所会長を呼び止めたこと。辞めるのかな?と勝手に僕は思い、同じ夢や迷い、葛藤を抱えたメンバーの1人が辞めると言い出した時、他の面々は何を思い、どうするのか?と考えていきました。
子供の頃、好きでよく観ていたちょっとクサイ青春モノへのオマージュと共に、芸能界での活躍を夢見る若者達の群像劇といえば、『コーラスライン』や『フェーム』が思い浮かんだ。これまでの人生の喜怒哀楽や、劇的な出来事、これからの夢などをメンバーたちに聴くことにした。
すると、語られたのは複雑な家庭環境や幼児期の性虐待のトラウマ、芸能界を目指すといって教師や同級生からバカにされイジメられた屈辱、同性から急に迫られ焦った話など、僕が考えた話より全然面白い。どうしてこんなにも皆んな色々抱えているのだろう?いや、それだからこそ、表現の場を求め、ここにいるのに違いない。言葉に詰まり、言葉を選び、普通なら、あまり語りたくないような事柄も、時に脚色を交え、哀しみや苦しみを笑いや原動力に変え、嬉々として皆、語り続けた。ツライ時の支えや励ましとなってきたエンタメへの感謝と憧れ、熱い思いと共に。
プライベートな出来事を語る役者に世間は時に否定的でも、語るべき人がそれを語らないで、誰に何を語れというのだろう?これまでのツラく嫌な体験や思いは、今ここで語るためにこそあったのではないかとさえ、勝手ながら思いました。
ただ、そうして話の筋を書き、メンバーたちとのグループラインに送り、改良案を求めるも反応は皆無と冷ややかなものでした。この企画をやる気なのは俺1人か?と、自主映画監督の孤独を今更感じ、皆のやる気を疑いました。演者のプライベートやリアルエピソードを含み、事務所やお互いへの不満などをアドリブで罵り合うと書いたあたりが皆の腰を引かせ、否定的なコメントを返すよりは、スルーしたほうがましと考えたのかもしれません。後日、直接感想を聞いても「難しんじゃないですか?」などと否定的な言葉が並んだ。
当初は短編映画のつもりだったと思いますが、メンバー達のエピソードを聴き、話を考えるうちに、短編には収まらなくなりました。何本かの短編に分けるよりも、長編映画として組み合わせ、まとめたくなってきたのです。
ただ、長編となると、まとまった製作費が必要です。またいつものように、この企画に賛同してくれるスタッフとキャストに、薄給や無給のボランティア参加をお願いし、企画した監督は当然のように持ち出しという、これまでのパターンはなんとか避けたいとも思いました。そこで、製作費や賞金が出る、いくつもの企画や脚本のコンペや助成金に応募し続け、2年間落ち続けました。2022年にようやくコロナ禍対策の補助金を文化庁から戴けることになり、撮ることができました。
途中で事務所が分裂し、当て書きした出演予定者の半分は出られなくなってしまいました。流用させてもらいたいエピソードもありましたが、新たな出演者たちも語るべき別の物語を皆持っていました。
補助金のおかげで、スタッフとキャストには、自主映画としては普通以上の?謝礼をお支払いすることができました。ただ、編集もする監督・今野は、不具合続きのパソコンや周辺機器を買い替え、補助金対象外の出費を引き受け、採算が取れるか否かは、本作の今後の展開次第となっております!